この記事では、Apple 社がプライバシー保護のために対応を進めている ITP (Intelligent Tracking Prevention)の接客シナリオへの影響について説明します。
この記事の内容は、2021年2月1日時点の最新の情報に基づいています。
目次
ITP とは
ITP が接客シナリオに与える影響
ITP の影響を最小限にする方法
ITPとは
Apple 社は2017年からユーザーのプライバシー保護を目的に ITP(Intelligent Tracking Prevention)の取り組みを進めており、段階的に Safari ブラウザーに制限を加えてきました。
WebKit の Tracking Prevention Policy によると、WebKit Open Source Project では、 ITP によりすべての covert tracking (秘密のトラッキング)と、たとえそれが秘密でないにしても、すべての cross-site tracking (複数のWebサイトをまたぐトラッキング)を防ぐことを目的にしています。
これは、単一ウェブサイトをスコープとした分析やオーディエンスの計測といった、Sprocket がサービス提供にあたり利用するWebサイトの慣習を妨げることを意図した制限ではありません。しかしながら、トレードオフに直面した場合、通常 WebKit Open Source Project はユーザー利益を優先するため、本記事執筆時点で接客シナリオは以下のような制約を受けます。
ITP が Sprocket の接客シナリオに与える影響
対象ブラウザー
- iOS、iPadOS 13.4 以降(ただし、ユーザーが ITP を明示的に無効化している場合を除く)
- macOS の Safari 13.1 以降(ただし、ユーザーが ITP を明示的に無効化している場合を除く)
接客シナリオに与える影響
Sprocket では、1st party cookie と LocalStorage を併用してユーザーを同定しています。
上記の対象ブラウザーでは、7日間以上サイトインタラクション(サイト上での何かしらの操作)がない場合に、スクリプトで書き込みができるブラウザーストレージ(1st party cookie と LocalStorage を含む)が削除されます。
そのため、接客シナリオの挙動が以下のような影響を受けます。
- Sprocket 導入サイトで7日間サイトインタラクションがない場合、ブラウザーに保存された情報が削除され、別ユーザーに切り替わります。Sprocket では、シナリオ成果を計測する KPI・KGI の計測期間を14日間としていますが、ポップアップを表示した後に別ユーザーに切り替わった場合、KPI、KGI がシナリオの成果として計測されません。また、セグメント条件に使用する行動データも同一ユーザーとして計測できなくなります。
- 逆に、7日の間にサイトインタラクション(サイト上での何かしらの操作)があると、同一ユーザーでトラッキングできる期間がその時点から7日間に延長されます。
- 一度別ユーザーになった後でも、会員ID連携を行えば前のユーザーと同一人物として再度トラッキングを開始できます。ただし、ログアウトした状態で別ユーザーとして計測された行動データは、セグメント条件として使用できません。
シナリオ成果の集計基準については、以下の記事もご参照ください。
リファラーを使ったユーザーセグメント機能に与える影響
流入元が以下の条件を満たす場合、リファラーがドメインしか取得できなくなります。この場合、[ユーザー条件]の[リファラー]、[パラメーター]が意図したとおりに動作しなくなります。
- トラッカー判定されたWebサイトから遷移してきた場合
- リンクデコレーションされた URL から遷移してきた場合(例:クエリー「?query=value」やフラグメント「#fragment」付きの URL から遷移)
[ユーザー条件]の[リファラー]、[パラメーター]については、以下の記事もご参照ください。
ITP の影響を最小限にする方法
WebKit の Tracking Prevention Policy によると、WebKit Open Source Project では、「同一アカウントを使った複数のファーストパーティWebサイトやアプリへのログイン」のような特定のユーザーアクションを、これら複数の場所で同一のIDを持つことでユーザーを同一と見なすことについての暗黙的な同意と見なしています。(※)
(※)これらのログインはユーザーアクションを必要とし、かつユーザーが認識できる必要があり、不可視または非表示であってはいけないという内容も併記されています。
そのため、明示的なログイン動作をきっかけにした会員ID連携の実装が、ITP の影響を最小限にする最善策と考えられます。会員ID連携が未実装の場合には、活用をご検討ください。
会員ID連携とユーザー属性タグについては、Developer Hub の以下の記事もご参照ください。
会員ID連携(簡易連携)
ユーザー属性タグ